カテゴリー: 有名な系外惑星

LP 791-18 d

LP 791-18 d は、太陽系から 86.4 光年( パーセク)離れた恒星LP 791-18 を周回する系外惑星で 2023 年に公開されました。恒星 LP 791-18 は視等級 16.9, 絶対等級 14.8 です。この恒星は太陽の 0.1 倍の質量で、 半径は太陽の0.2 倍であり 表面温度は 2960 で、スペクトル型は M6Vです。

 

地球とほぼ同じサイズ感の惑星。しかも火山活動と大気がある可能性あり!?

地球サイズの系外惑星LP 791-18 dは、太陽系からおよそ90光年離れたコップ座の方向にある、赤色矮星LP 791-18の惑星である。この恒星系にはこれまで、惑星bとcが見つかっている。 新たな惑星dは、惑星bとcの間の軌道に位置しており、恒星の周りを公転周期2.75日で公転している。半径はおよそ1.03地球半径と推定され、半径は地球ととてもよく似ている。また惑星dの質量は地球と同程度である。惑星bは地球の約1.2倍の半径で公転周期は約0.94日、惑星cは地球の約2.5倍の半径で質量が地球の9倍程度、公転周期は約4.99日の惑星である。

惑星dはハビタブルゾーン(生命居住可能領域)の内側境界付近にあり、大気を保持する可能性があるため、生命誕生の起源を探る研究にとって、興味深い惑星として注目されている。この惑星は、外側の隣接する軌道を公転する、大きくて重い惑星cからの引力を受けて公転軌道が、わずかに楕円形になっている。この楕円形の軌道を公転する中で、惑星dには恒星からの潮汐力が働き、わずかに変形する。そのことにより、太陽系で最も活発な火山活動を示す、木星の衛星イオの加熱メカニズムと同じように、惑星内部の摩擦を生み、惑星を加熱し、惑星表面で活発な火山活動を起こしている可能性がある。今後の惑星大気の観測によって、地殻活動が惑星大気に、どのような影響を及ぼすかについて、重要な発見をもたらす可能性がある。

惑星dは、地球の月と同じように、潮汐力により自転周期と公転周期が一致しており、常に恒星LP 791-18に同じ面を向けているため、昼側は300–400 Kと高温で、水は蒸発してしまっている可能性が高い。ただし一方、夜側は十分に冷えていると考えられるので、火山活動が起こっていれば、惑星dに大気が存在し、夜側の面では大気中で水蒸気が凝集し、液体の水が存在している可能性がある。

また、惑星dの活発な火山活動は、本来惑星の地殻内部に閉じ込められてしまうはずの物質を、大気中に送り込む役割を果たしている可能性がある。そういった物質の中には、生命にとって重要である炭素なども含まれる。この惑星の大気組成の検出が実現できれば、惑星の地殻活動が惑星大気に及ぼす影響を、深く調べることが可能になるであろう。これは生命の起源の研究につながる可能性があり、「アストロバイオロジー(宇宙生物学)」の観点からも重要である。

本研究成果は、2023年5月17日(英国夏時間)に英国科学誌「Nature」に掲載された。東京大学大学院総合文化研究科の成田憲保教授(自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター客員教授)、福井暁彦特任助教、森万由子特任研究員らが参加する国際研究チームにより、アメリカ航空宇宙局 (NASA) のトランジット惑星探索衛星TESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)、NASAのスピッツァー宇宙望遠鏡、及び東京大学とアストロバイオロジーセンターの研究者が開発した、多色同時撮像カメラMuSCAT、MuSCAT2を含めた多数の地上望遠鏡等が連携した観測により、発見された。

 

〈参照〉論文情報

・東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部:火山活動の可能性がある地球サイズの惑星を発見 ー 潮汐力により加熱された系外惑星 LP 791-18d

・Spitzer Space Telescope:NASA’s Spitzer, TESS Find Potentially Volcano-Covered Earth-Size World

NASA JPL

・IAC:Astronomers find Earth-sized world potentially covered in volcanoes

・Nature:A temperate Earth-sized planet with tidal heating transiting an M6 star 論文: 2023年5月17日

(文責:日置)

 

LP 791-18 dの詳細な情報はこちら

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/LP_791-18_dJP.html

HD 104985 b

HD 104985 b は、太陽系から 316.7 光年( パーセク)離れた恒星HD 104985 を周回する系外惑星で 2003 年に公開されました.恒星 HD 104985 は視等級 5.8, 絶対等級 0.9 です.この恒星は太陽の 1.6 倍の質量で、 半径は太陽の10.9 倍であり 表面温度は 4786 で、スペクトル型は G9 IIIです。この恒星の惑星系で HD 104985 b は、恒星 HD 104985 のまわりを 公転周期199.5 日で、 軌道長半径 0.95 天文単位 ( 142117977.2 km)で公転しています。

【HD 104985 b概要】

HD 104985は、きりん座の6等星(視等級)で地球から約317光年離れた場所にあります。この恒星から1天文単位より少し内側に公転軌道を持つ惑星がHD 104985 bです。HD 104985 bの半径は木星とほぼ同じで、質量は木星の8.3倍です。太陽系で例えると金星と地球の軌道の間にある木星サイズの惑星がHD 104985 bであり、地球とほぼ同じ距離を回っていますが、中心星が非常に巨大なため灼熱環境であると考えられます。

【日本で初めて検出された系外惑星 〜世界に示した独自性〜】

HD 104985 bは、岡山天体物理観測所の所有する188 cm反射望遠鏡で視線速度法により検出され、2003年に国立天文台に所属していた佐藤文衛氏(現東京工業大学)らによって発表されました。これは日本で初めての系外惑星の検出で、国内外で大きな注目を集めました。1995年に系外惑星が世界で初めて観測されて以来、熾烈な“プラネットハンティング競争”が世界中で行われていましたが、そこに日本も名乗りを上げることとなりました。

それまでの観測では太陽に似た星をターゲットにしていましたが、佐藤氏らは巨星という、進化が進み大きく膨れ上がった星の周りで惑星探査をはじめました。実際にHD 104985の半径は太陽の10.6倍で、佐藤氏らが観測候補として挙げていた巨星の中の1つでした。その後2年間の粘り強い観測の結果、見事巨星周りでも系外惑星が存在することを証明し系外惑星探査における日本の独自性をアピールしました。

【岡山天体物理観測所188 cm反射望遠鏡 〜半世紀に渡って日本の天文観測を支えた望遠鏡〜】

国立天文台のプロジェクトの一つである岡山天体物理観測所は、1962年に岡山県浅口市で観測を開始しました。プロジェクトとしての運用を終える2018年まで、約56年間に渡って優れた光赤外線天文観測所として多くの研究者に利用されてきました。この観測所で最も大きい望遠鏡が188 cm反射望遠鏡であり、数多くの重要な発見に貢献しています。特に系外惑星の発見は著しく、他の望遠鏡との共同観測も含めると現在までに58個の新たな系外惑星の発見に貢献しています。

(188cm望遠鏡の概要・功績の詳細はこちらを参照ください)

188cm反射望遠鏡(https://www.nao.ac.jp/research/telescope/188cm.html

プロジェクト終了後、岡山天体物理観測所の望遠鏡は運用に携わっていた各大学の研究者に専用望遠鏡として引き継がれました。現在は、ドームの故障により188 cm反射望遠鏡は運用を停止しています。復旧作業が終わり、もう一度188 cm反射望遠鏡の活躍する姿が見られることを期待していましょう。

【京都大学岡山天文台せいめい望遠鏡 〜東アジア最大級の望遠鏡〜 】

188 cm望遠鏡のあとを継ぐように2019年に新たに岡山で運用が開始された望遠鏡があります。それが京都大学の所有するせいめい望遠鏡です。これは主鏡に口径3.8メートルの18枚複合鏡を持つ東アジア最大の望遠鏡です。(“最大”または“最大級”のどちらであるかについては諸説あり。詳細はこちらを参照ください。)

せいめい望遠鏡(筆者撮影)

この「せいめい望遠鏡」という名前は、平安時代の陰陽師 安倍晴明に由来しています。全国で天体観測を行っていた安倍晴明は、現在の岡山天文台から北西にある阿部山の山頂付近に天体観測のための住居を構えていたとされています。そんな岡山にゆかりを持つ天文研究の大先輩である安倍晴明にちなんで「せいめい望遠鏡」と名付けられたのです。

せいめい望遠鏡でも系外惑星の探査・観測は行われており、2023年度後期からは新しくGAOES-RVという高分散分光器が運用を開始します。高分散分光器とは、望遠鏡の集めた光を波長ごとに分けて検出する装置で、視線速度法を用いた系外惑星の観測には欠かすことができません。今までの高分散分光器に比べて性能が向上し、GAOES-RVはより暗い星での系外惑星観測ができるようになると言われています。

(GAOES-RVの詳細はこちらを参照ください。)

日本初の系外惑星の検出から最新の観測装置まで、系外惑星探査の軌跡を辿ってきました。系外惑星の魅力は語り尽くせませんが、それらを発見している望遠鏡や観測装置にもまた違った魅力があります。みなさんが少しでも興味を持たれたならば、夜空に浮かぶ満点の星空だけではなく、地上に構える“大きな目”にも注目してみてはいかがでしょうか。

(文責:渡邊新)

HD 104985 bの詳細な情報はこちら

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/HD_104985_bJP.html

Kepler-1625 b/ Exomoon Kepler-1625 b I

Kepler-1625 b は、太陽系から 7587.4 光年( パーセク)離れた恒星Kepler-1625 を周回する系外惑星で 2016 年に公開されました。恒星 Kepler-1625 は視等級 14.4, 絶対等級 2.5 です。この恒星は太陽の 1.0 倍の質量で、 半径は太陽の1.8 倍であり 表面温度は 5586 で、スペクトル型は G5です。この恒星の惑星系で Kepler-1625 b は、恒星 Kepler-1625 のまわりを 公転周期287.4 日で、 軌道長半径 0.84 天文単位 ( 125774415.6 km)で公転しています。

Kepler-1625 bはNASAのKepler宇宙望遠鏡が発見した2,662個の太陽系外惑星の内の1つで、地球から8000光年離れたKepler-1625を周回する木星サイズの巨大ガス惑星です。ガス惑星であることからこの惑星はハビタブルな惑星ではありませんが、ハビタブルゾーン周辺に位置しています。

Credits: ExoKyoto(http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Kepler-1625_bJP.html)

Kepler宇宙望遠鏡のトランジットのデータが詳細に解析されたところ、2018年にKepler-1625 bが通過した直後に別の微弱なトランジットのシグナルが見つかり、Hubble宇宙望遠鏡でも追跡研究が行われ、このシグナルはKepler-1625 bを周回する月である可能性が示され、太陽系外惑星の月(Exomoon)候補として、Kepler-1625 b Iと名付けられています。ただ、Kepler-1625 b Iのトランジットのシグナルは微弱であるため、追跡研究において実験上のノイズの可能性も指摘されており、確定はされていません。今後、James Webb宇宙望遠鏡による詳細な観察により、初の太陽系外衛星の確定が期待されています。

Kepler-1625 b Iが存在する場合は、海王星サイズのガス衛星だと考えられています。ガス衛星ですので、この衛星もハビタブルな環境は期待できませんが、シミュレーションを用いたKepler-1625 b やKepler-1625 b Iに関する研究も進められており、月であるKepler-1625 b Iにさらに、地球サイズの月が存在する可能性も示されています。その月は岩石衛星であり、ハビタブルゾーン付近に存在するハビタブルな月である可能性があり、地球外生命体の存在も期待されます。

Credits: NASA
(https://exoplanets.nasa.gov/news/1525/new-moon-astronomers-find-first-evidence-of-a-possible-moon-outside-our-solar-system/)

Exomoon候補であるKepler-1625 b Iについてはまだ未確定で、その月となるとさらにシミュレーションの域を超えませんが、私たちが住む太陽系を考えてみると、水星と金星以外は月を有しているので、惑星にとって月はありふれた存在だと言えると思います。James Webb宇宙望遠鏡による更なる観察によって、初の太陽系外衛星が確定されることを期待しています。

(文責:小塚)

<参考>

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Kepler-1625_bJP.html

https://exoplanets.nasa.gov/news/1525/new-moon-astronomers-find-first-evidence-of-a-possible-moon-outside-our-solar-system/

https://academic.oup.com/mnras/article-abstract/510/2/2583/6498286?redirectedFrom=fulltext

https://arxiv.org/pdf/1810.02712.pdf

Kepler-1625 bの詳細な情報はこちら

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Kepler-1625_bJP.html

The Overview of Space Telescopes

太陽系外惑星の探査のmissionを持つ宇宙望遠鏡

NASA mission

Hubble 宇宙望遠鏡:

Credits: NASA(https://www.nasa.gov/content/goddard/hubble-space-telescope-design)

1990年に運用を開始し、2023年7月時点も運用継続中。直径2.4mの主鏡をもつ大型光学式宇宙望遠鏡。 観測波長は紫外線と可視光、近赤外線。地上約547km上空の軌道上を周回する。 太陽系外惑星の探査において、候補惑星に焦点を絞り使用されており惑星の大気を直接検出し、組成を調査した最初の望遠鏡。惑星が恒星と地球の間を通過する際に恒星の光が惑星の大気に吸収される。その吸収光の分析により、大気の成分分析を試みている。

Spitzer 宇宙望遠鏡:

Credits: NASA JPL(https://www.spitzer.caltech.edu/mission/store-and-dump-telemetry)

2003年に運用開始され、2020年まで運用された。口径が0.85mの主鏡を持つ赤外線観測衛星。観測波長は赤外~遠赤外線(3~180 μm)。地球を追いかける形で太陽周回軌道上に存在する。太陽系外惑星の探査において、太陽系外の惑星(恒星の近傍を周回する巨大ガス惑星、通称「ジャイアントジュピター」)の光を直接検出した最初の望遠鏡であり、これらの遠い惑星の温度、風、大気組成を決定することを可能にした。

Kepler 宇宙望遠鏡:

Credits: NASA JPL Credits: NASA/Ames/JPL-Caltech/T Pyle(https://www.nasa.gov/kepler/missiontimeline)

2009年に運用開始され、2018年まで運用された。直径が1.4mの主鏡を持つ赤外線観測衛星。観測波長は可視光~近赤外線(420~900 nm)。地球を追いかける形で太陽周回軌道上に存在する。 NASAで初めての太陽系外惑星の探査を主目的としたミッション。トランジット法を用いて2,662個の太陽系外惑星を確定した。

ExokyotoのKepler宇宙望遠鏡の記事はこちら

Kepler Space Telescope

TESS (Transiting Exoplanet Survey Satellite)

Credits: NASA (https://www.nasa.gov/content/about-tess)

2018年に運用を開始し、2023年7月時点も継続中。広視野カメラを使用して全天の85%の観測を行う。 Kepler宇宙望遠鏡の400倍の面積をトランジット法を用いて観測。地球周回軌道は軌道離心率の高い楕円軌道を周回する。太陽系外惑星の探査を主目的とし、トランジット法で何千もの系外惑星候補を抽出する。真の太陽系外惑星であることを確認するために、地上望遠鏡と協力して惑星の大きさ、軌道、質量を決定する。

ExokyotoにおけるTESSの記事はこちら

Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS)

James Webb 宇宙望遠鏡:

Credits: NASA (https://webb.nasa.gov/content/webbLaunch/deploymentExplorer.html#0)

2021年に運用を開始。直径6.5 mの巨大な主鏡を持つ。赤外線観測に主眼が置かれている。地球から約150万km離れた、太陽・地球系のラグランジュ点L2を周回する。太陽系外惑星の探査ではトランジット法で惑星の大気を測定する。地上望遠鏡(ドップラー法)と協力して質量も測定する。恒星近くの惑星を撮影し、分光法により色や冬と夏の差、植生、自転、天候も測定。

 

ESA/European mission

COROT(Convection, Rotation and planetary Transits):

Credits: ESA (https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/COROT_overview)

2006年に運用が開始され、2014年まで運用された。トランジット法での系外惑星の検出を主目的とした初めての宇宙機(Keplerよりも先に運用開始)。口径0.27mの反射式望遠鏡。4つの CCD 検出器を搭載。高度900kmの地球の軌道上を周回。

Gaia

Credits: ESA/ATG medialab; background: ESO/S. Brunier
(https://www.explore-exoplanets.eu/resource/gaia/)

2013年に運用を開始し、現在(2023年7月時点)も運用継続中。116個のCCD 焦点面アレーを搭載。地球から約150万km離れた、太陽・地球系のラグランジュ点L2を周回する。トランジット法、ドップラー法、分光法の3つの測定法により太陽系外惑星の探査を行う。観測波長は 330~1050nmをカバーし、プリズムによって分光エネルギー分布の測定を行う。

Cheops

Credits: ESA (https://www.cosmos.esa.int/web/cheops)

2019年に運用を開始し、現在(2023年7月時点)も運用継続中。系外惑星観測用の衛星で、すでに発見されている系外惑星をトランジット法により詳細に観察することが目的。320mmと主鏡68mmの副鏡を有する宇宙望遠鏡。観測波長は50nmから1100nm。高度700 kmの地球の軌道上を周回する。

(文責:小塚)

参考資料

Exoplanet mission

https://www.nasa.gov/sites/default/files/thumbnails/image/exoplanet_missions.jpg

https://www.cosmos.esa.int/web/cheops

Hubble

https://www.nasa.gov/mission_pages/hubble/observatory

https://www.nasa.gov/content/goddard/hubble-space-telescope-optics-system

https://www.nasa.gov/content/goddard/hubble-space-telescope-science-instruments

https://hubblesite.org/science/exoplanets

Spitzer

https://www.spitzer.caltech.edu/mission/fast-facts

https://www.spitzer.caltech.edu/mission/exoplanets

Kepler

https://keplergo.github.io/KeplerScienceWebsite/the-kepler-space-telescope.html

https://www.nasa.gov/kepler/missionstatistics

TESS

https://www.nasa.gov/content/about-tess

https://www.nasa.gov/sites/default/files/atoms/files/tesssciencewritersguidedraft23.pdf

James webb

https://webb.nasa.gov/content/webbLaunch/needToKnow.html#aboutWebbImages

https://webb.nasa.gov/content/science/origins.html

COROT

https://sci.esa.int/web/corot

Gaia

https://www.cosmos.esa.int/web/gaia/photometric-instrument

https://www.cosmos.esa.int/web/gaia/exoplanets

https://sci.esa.int/documents/33580/36006/1567260289934-Gaia_media_kit_v20160921.pdf

Cheops

https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Cheops

https://sci.esa.int/web/cheops/

Kepler Space Telescope

Kepler missionが提案され、承認されるまでの背景

Kepler missionはNASAで初めて太陽系外惑星の探査を主目的としたミッションで、2009年から2018年の9年間運用された。このミッションが実施されたきっかけは、NASA Ames Research Centerの研究者であるWilliam Boruckiが恒星を惑星が通過する際に恒星の輝度がわずかに減少することを検出するトランジット法(transit photometry)の研究を始めた1983年に遡る。彼と彼のチームは「ほとんどの恒星は惑星を有しており地球型惑星(terrestrial planets)はありふれている」という仮説を立てて、1992年に太陽系外惑星の探査を目的としたミッションをNASAに初めて提案するも採択されなかった。しかし、その後も研究の改良を行いながら提案を続けた。当時は太陽系外惑星に対して大きな注目を集めていなかったが、1995年に初の太陽系外惑星51 Pegasi bの発見(Mayor MichelとQueloz Didierによる発見、2019年にノーベル物理学賞を獲得)をきっかけに世界中から注目されるようになる。そして、2001年の5度目の提案でついに採択された。なお、ミッション名のKeplerの名前は17世紀のドイツの天文学者Johannes Kepler(惑星の運動に関する法則(ケプラーの法則)の発見者)から名づけられた。そして2009年に、 Kepler宇宙望遠鏡 はDelta IIロケットによってフロリダの ケープ・カナベラルから打ち上げられた。

搭載された光学系の特徴

Kepler宇宙望遠鏡は直径0.95mのシュミットコレクターを通して光を集め、直径1.4mの主鏡でCCDモジュールへ集光する宇宙望遠鏡である(図1)。21個のCCDモジュールからなり、各モジュールには 2つのCCD(2200×1024 pixel)が搭載されており、合計42個のCCDで撮像する(図2,3)。しかし、mission中に3つのモジュールで故障が生じ、mission後半では18個のモジュールでの運用となった。各CCDにはフラットナーレンズとバンドパスフィルターが備え付けられており、420から900 nmの波長の光を検出する(図4)。この波長域はM5型(例:プロキシマ・ケンタウリ)やG2型(例:太陽 )の恒星の発する光のピーク波長を含んでいる。

図1. Kepler宇宙望遠鏡の模式図

Credit: NASA

図2. CCDモジュール

Credit: NASA

図3. Kepler宇宙望遠鏡で得られる画像の例

Credits: NASA/Ames

図4. 検出可能な波長

Credit: NASA

観察エリア

太陽系外惑星を発見するには多くの恒星を観察することが求められるため、天の川銀河の平面の恒星が密集したエリアが理想である。しかし、トランジット法を用いた観察のために3.5年の間(少なくとも6年まで延長)同じ視野を観察する計画であり、毎年太陽を周回する際に太陽が視野に影響しない方向としては太陽の軌道から55°以上、上(北天)か下(南天)の方向を観察対象とする必要がある(図5)。比較の結果、南天に比べて星が豊富な北天の白鳥座付近が選ばれた(図6)。そして、この領域において150,000個以上の恒星を観察することを目標とした。 なお、太陽光発電パネルを太陽の方向に向けるために、93日おきに回転制御が行われた。Kepler宇宙望遠鏡によって地球サイズの惑星が検出される恒星までの距離は600光年から3,000光年であり、600光年より近い恒星は1%未満である。なお、3,000光年より遠い恒星は、トランジット法で地球サイズの惑星を観測するには暗すぎると考えられている(図7)。

図5. 観察方向と周回軌道

Credit: NASA

図6. 固定視野

Credit: NASA/JPL

図7. 観察範囲

Credit: NASA/JPL

運用実績・成果

Kepler宇宙望遠鏡は9年間にわたりデータを収集した後、さらなる科学活動に必要な燃料を使い果たしたため、2018年10月に地球から約1億8千万キロメートル離れた安全な軌道上で停止コマンドである‘Goodnight’が送信されてmission を終えた。2018年10月に活動を終えた時点で、「530,506個の恒星を観察」、「2,662個の太陽系外惑星を確定(候補ではない)」、「61回の超新星爆発を観測」、「678GBのデータを収集」、「2,946報の科学雑誌に投稿される」などの成果を得た。 また、太陽系外惑星の観測において、太陽系には存在しない惑星を特徴付けた。これらは地球より大きく海王星規模までのサイズであり、巨大地球型惑星(スーパーアース)と名付けられた。運用が終了した後もデータの解析は続けられており、新たな太陽系外惑星候補が現在も見つかっている。

(文責:小塚)

参考資料

https://www.nasa.gov/mission_pages/kepler/overview/index.html

https://www.nasa.gov/kepler/missiontimeline

https://keplergo.github.io/KeplerScienceWebsite/the-kepler-space-telescope.html

https://www.nasa.gov/mission_pages/kepler/spacecraft/index-mission.html

https://www.nasa.gov/pdf/189566main_Kepler_Mission.pdf

https://www.nasa.gov/kepler/presskit

https://www.nasa.gov/feature/ames/kepler-space-telescope-bid-goodnight-with-final-set-of-commands

https://www.nasa.gov/kepler/missionstatistics

http://planetary.jp/topics/JPL/2018-7271-jpl.html

https://www.nasa.gov/sites/default/files/thumbnails/image/exoplanet_missions.jpg

WASP-121 b

WASP-121 b は、太陽系から 853.8 光年( パーセク)離れた恒星WASP-121 を周回する系外惑星で 2015 年に公開されました.
恒星 WASP-121 は視等級 10.4, 絶対等級 3.3 です.
この恒星は太陽の 1.4 倍の質量で、 半径は太陽の1.5 倍であり 表面温度は 6460 で、スペクトル型は F6Vです。
この恒星の惑星系で WASP-121 b は、恒星 WASP-121 のまわりを 公転周期1.3 日で、 軌道長半径 0.03 天文単位 ( 3805769.8 km)で公転しています。

公転と自転周期がほぼ同時のホット・ジュピター。昼半球と夜半球の気温差によりルビーやサファイアの雨?

2015年に太陽系外惑星探査プロジェクトスーパーWASPによる観測で発見された。
地球から「とも座」の方向におよそ880光年離れた位置にある灼熱巨大ガス惑星で、F型主系列星WASP-121の周囲を公転している。質量は木星の約1.2倍、半径は木星の約1.8倍で、恒星(WASP-121)から380万kmとかなり近い距離を1日余り(約30時間)で公転する。表面温度は約2000 K、上層大気は約2500Kにもなる「ホット・ジュピター」の一つ。
自転周期が公転周期とほぼ同じで、半面は常に恒星を向く昼半球(もう半面は常に外を向く夜半球)となるのが特徴的。
夜半球ですら気温が1500℃を超えるので、地球の様な水の雲ではなく、鉄やマグネシウム、クロム、バナジウムといった金属で構成される雲が存在している。
2017年、ハッブル宇宙望遠鏡による観測でWASP-121 bの大気組成が水蒸気、酸化バナジウム(II)、酸化チタン(II)が含まれている事が明らかになり、成層圏が存在することはほぼ間違いないとされる。

2019年、恒星に近いことから潮汐力によってWASP-121 bは引き裂かれる寸前といえる状態で、フットボールのような形状になっていると考えられる。David Sing氏らはハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている「宇宙望遠鏡撮像分光器(STIS)」の観測データを使い、雲のなかに凝縮している鉄やマグネシウムといった金属までもが、軽い元素(水素やヘリウム)とともに惑星から離れた宇宙空間へ流出していることを確認した。

2022年、ハッブル宇宙望遠鏡でWASP-121 bの昼半球と夜半球の両方のスペクトル解析により、地球とは異なる水循環が確認された。常に恒星を向く昼半球では上層大気の温度が最大で3000℃を超え、水は蒸発してさらに水素と酸素に分解される。一方、夜半球の上層気温は1500℃にまで下がるため、昼半球と夜半球で1500℃も気温差が生まれることで強風が吹き抜け、水素と酸素を夜半球まで運び、夜半球側で水素と酸素が再結合して水蒸気となり、そのまま再び昼半球に吹き込むという循環をもつ。天文物理学者のTansu Daylan氏によると、この強風は20時間程度で惑星全体の雲を移動させることができるとされる。
WASP-121 bにて様々な金属元素(バナジウム、鉄、クロム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、ニッケルなど)は確認されたが、アルミニウムやチタンが検出されなかった。研究チームはアルミニウムやチタンが凝縮し地表に降り注いでしまったためだと推測し、アルミニウムは大気中の酸素と凝結すると「コランダム」という鉱物になり、コランダムにクロムや鉄、チタン、バナジウムなどの不純物が含まれるとルビーやサファイアになるため、WASP-121 bの夜半球に液体のルビーやサファイアが雨となって降り注いでいる可能性があると推測した。

Delrez, L. et al. (2016). “WASP-121 b: a hot Jupiter close to tidal disruption transiting an active F star”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 458 (4): 4025-4043. arXiv:1506.02471. Bibcode: 2016MNRAS.458.4025D. doi:10.1093/mnras/stw522. ISSN 0035-8711.
Evans, Thomas M. et al. (2017). “An ultrahot gas-giant exoplanet with a stratosphere”. Nature 548 (7665): 58-61. arXiv:1708.01076v1. Bibcode: 2017Natur.548…58E. doi:10.1038/nature23266. ISSN 0028-0836.
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(文責:小川)

Imaginary picture of WASP-121 b

Imaginary Picture of WASP-121 b: Illustrated by Yuna Watanabe