投稿者: exoplanetkyo

AU Mic b

AU Microscopii (AU Mic)は、けんびきょう座の方向約32.3光年先にある恒星です。M1型に分類される赤色矮星で、見かけの等級は8.7、表面温度は3730 Kです。半径は太陽の約0.57倍で、年齢は太陽より約150倍若く2000万年から3000万年と推測されています。この星は非常に若く、自身の重力で内側に引かれ圧縮される際に発生する熱によって光を放出しています。太陽のような水素の核融合によるエネルギーは、10%未満しかありません。

興味深いのは、この星の周りを回る塵円盤です。この円盤は、マウナケア山頂にあるハワイ大学2.2m望遠鏡によって2003年に発見されました。円盤はAU Micから約35 AUから210 AUのところで検出されていて、塵の年齢は現在の星の年齢を超えているといわれています。また、円盤を構成している塵の総量は少なくとも月の6倍の質量に相当すると考えられています。

円盤の中を移動する塵の塊が追跡されてきましたが、TESSとスピッツァー宇宙望遠鏡によってこの塵円盤の中から惑星が発見されたと2020年6月に発表されました。それがAU Mic bです。AU Mic b は主星から約0.07 AUの軌道を約8.46日で公転しています。半径は木星の約0.4倍で、質量は木星の約0.18倍です。

AU Micのような星の惑星の検出は特に難しいとされています。というのは、このような星は強い磁場をもち、太陽黒点のような冷たく暗く磁気の強い領域である恒星黒点に覆われていることがあり、この恒星黒点は頻繁に強力なフレアを発生します。実際、TESSがAU Micを観測していた2018年7月から8月にも多数のフレアが発生し、その中にはこれまでに太陽で観測された最も強いフレアよりも強力なものもありました。研究チームは、これらの影響をデータから取り除く詳細な分析を行い、AU Mic bの発見に至りました。

この塵円盤の中に存在する惑星の研究により、惑星の形成や進化の解明に近づくことが期待されています。

(文責 清水里香)

AU Mic bについてもっと知りたい方は、以下のデータベースページをご覧ください。

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/AU_Mic_bJP.html

(参考)

NASA “NASA’s TESS, Spitzer Missions Discover a World Orbiting a Unique Young Star” <https://www.nasa.gov/feature/goddard/2020/nasa-s-tess-spitzer-missions-discover-a-world-orbiting-a-unique-young-star> (2020/6/29 参照)

Size of AU Mic & AU Mic b in comparison with our Solar System
Habitable zone calculated based on Kopparapu et al.(2013) around the star AU Mic
Imaginary Picture of AU Mic b (Fuka Takagi & Yosuke A. Yamashiki)

Kepler-1649 c

Kepler-1649 cの想像図 (潮汐ロックを仮定)
Kepler-1649 cの想像図 (自転している海洋惑星を仮定)

Kepler-1649 cは、テキサス大学オースチン校のAndrew Vanderburgらによる Kepler宇宙望遠鏡ライトカーブの再解析(1)によって発見された、ほぼ地球サイズと考えられる太陽系外惑星である。大きさは、半径が地球の1.06倍、ExoKyotoによる推定質量は地球の1.21倍である(トランジット法による観測のため質量は測定されていない)。中心星のKepler-1649 は、太陽系から約300光年の位置に存在し、表面温度3240KのM5V型の赤色矮星で、半径は太陽の25%、質量は太陽の21.9%と見積もられている。この赤色矮星のまわり、0.0855天文単位(128万キロ)を19.5日で一周する。推定黒体温度は、論文(1)によると234 +-20K で、Kepler-1649 cのアルベドを地球と同じ0.3と仮定すると、245.39 Kとなり、ほぼ地球の黒体温度(255 ケルビン)と同じであり、大気圧や成分が地球と類似であれば地球ににた環境となる可能性が高い。

ただし、赤色矮星の近傍を公転している関係上、おそらく潮汐ロックされているであろう。また、表面から見える光は、地球からの太陽光と大きく異なり、赤外線が90%、可視光線成分はわずか8.87%である(ExoKyotoによる).

極紫外線を含む紫外線は0.17%と見積もられているが、フレアの発生頻度の解析とともに、さらに詳細な観測が必要である。本惑星が本当にハビタブルであるかどうかの判定には、極紫外線がそれほど強くなく、大気の散逸がそれほど顕著でなく、地球程度の大気圧を有していることが必要である。もしKepler-1634 がフレア星で強い極紫外線を放っていたとすれば、大気が剥ぎ取られ、恒星との距離が近い(0.055天文単位)ため、フレアの影響で生命の居住は困難になると考えられる(2)(3)(4)。

Kepler-1649 cは中心星 Kepler-1649のハビタブルゾーンに位置し、Kopparapu et al. 2013を用いると、ちょうど暴走温室限界の外側に位置する。

Kepler-1649 cの公転軌道と、Kopparapu et al.2013によるハビタブルゾーン
ExoKyotoによる大きさの比較

ExoKyoto スペクトルモジュールによるホスト星Kepler-1649からの推定スペクトル。これによると、赤外線90.95%、可視光線8.87%、紫外線0.17%である。すなわち、地球に比べて光が弱く、赤っぽい色に照らされていると考えられる。図では青線が紫と紫外線の境界線(380nm)で、赤線が赤色と赤外線の境界線(760nm)であり、恒星からの輻射スペクトルのピークは赤外線領域にある。

Kepler-1649cについてのより詳しいデータは以下のデータベースページをご参考に。

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Kepler-1649_cJP.html

(文責・山敷庸亮)

Kepler-1649 cExoKyoto Stellar Map上での位置
Kepler-1649 cExoKyoto Stellar Map上での位置

References

(1) Andrew Vanderburg et al. A Habitable-zone Earth-sized Planet Rescued from False Positive Status, The Astrophysical Journal Letters, Volume 893, Number 1 https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/ab84e5

(2) Yosuke A. Yamashiki, H. Maehara, Vladimir Airapetian, Yuta Notsu, Tatsuhiko Sato et al. Impact of Stellar Superflares on Planetary Habitability, The Astrophysical Journal, Volume 881, Number 2 https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ab2a71/meta

(3) 生命が居住可能な系外惑星へのスーパーフレアの影響を算出 -ハビタブル惑星における宇宙線被ばくの定量化に成功- http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2019/190716_1.html

(4) M型星はやっぱりつらい。スーパーフレアが系外惑星に与える影響を世界で初めて定量化 https://sorae.info/030201/2019_7_16_m.html

WASP-76b

WASP-76 bの想像図

WASP-76bは、うお座の方向約640光年先にある恒星WASP-76の周りを公転する太陽系外惑星である。

恒星WASP-76は視等級9.5、絶対等級4.1で、表面温度は6250K、スペクトル型はF7。

質量は太陽の1.5倍で、半径は太陽の1.7 倍。

WASP-76bはWASP-76の唯一の惑星で、ホットジュピターである。

2013年にトランジット法で発見された。

質量は木星の約0.92倍であるが、主星からの強い放射で大気が膨張し半径は木星の約1.83倍にもなり、低密度な惑星である。

軌道長半径は約0.033AU(500万km)で、公転周期は1.8日。

潮汐ロックの状態にあり昼側の温度は2700K、夜側は1800K。

2020年、パラナル天文台にある超大型望遠鏡(VLT)による観測で、昼側の大気に鉄の蒸気が豊富に含まれることがわかった。

昼側と夜側との温度差が1000K近くに達しているため強い風が吹いており、この風や自転の働きによって鉄の蒸気が昼側から夕方の境界を通り夜側に運ばれ、冷やされて凝縮し雨となって降り注いでいると推測されている。

WASP-76 bについて詳しく知りたい方は以下のサイトに

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/WASP-76_bJP.html

(参考)

TOI-1338b

TOI-1338bは、連星系TOI-1338を周回する周連星惑星である。NASAのインターン・プログラム中の高校生が発見したことで話題となった。

TOI-1338はがか座の方向1300光年先にある連星系で、質量は主星は太陽の1.1倍程度、伴星は太陽の1/3程度、約15日の周期で互いの周りを回っている。主星については、半径は太陽の3倍程度あるが表面温度は5723Kと太陽と同程度であり、スペクトル型はG4、見かけの等級は11.5、絶対等級は3.5である。名前のTOIというのはTESS Object of Interestの頭文字を取ったもので、系外惑星探査衛星TESSが探査した恒星や惑星を意味する。TOI-1338bの発見により、TOI-1338はTESSが発見した初の周連星惑星をもつ連星となった。

TOI-1338bはこの系唯一の惑星で、質量は地球の7倍程度、トランジット法で発見され2020年に公開された。その恒星が連星であることが影響し、トランジットの周期は93-95日で不規則。軌道面が連星の軌道面とほぼ一致しているため、常に恒星食の状態にある。ExoKyotoのスペクトルモジュールによれば、受ける光は可視光44.51%、赤外線47.80%、紫外線7.66%である。

(文責 清水里香)

TOI-700 d

TOI-700は地球からかじき座の方向に101光年離れた位置にある赤色矮星で、表面温度は3480K、スペクトル型はH2V、質量・半径ともに太陽のおよそ4割程度である。恒星の名前であるTOIとはTess Objects of Interest の頭文字で、太陽系外惑星探索衛星TESSの観測により惑星が存在する可能性が示された天体のカタログを意味している。TOIカタログにリストアップされた天体は、ドップラー分光法や直接撮像法などの、トランジット法以外の観測方法によって追加観測が実施される。本恒星はESAにより2013年に打ち上げられた宇宙望遠鏡ガイアによる、恒星観測ミッションの観測対象でもあったため、Gaia DR2 5284517766615492736とも呼ばれる。

TOI-700のトランジット観測の結果、TOI-700の周りを公転する3つの惑星を発見した。3つの惑星のうちで最も外側、0.16AUの位置を公転するTOI-700dは、地球の1.2倍の大きさの岩石惑星であり、かつ水が液体の状態で存在できる領域(ハビタブルゾーン)内にある可能性が高い。TESSは2018年の打ち上げ以降、多数の系外惑星を発見してきているが、ハビタブルゾーン内で発見された地球サイズの惑星はこれが初となる。

EXOKYOTOのスペクトルモジュールによると、TOI-700dがその恒星であるTOI-700から受ける光の85.72%は赤外線が占め、13.97%は可視光、0.30%が紫外線と見積もられている。

TOI-700 dの半径は、1.19地球半径であり、質量はまだ計測されていないが、EXOKyotoの質量推定モジュールを利用すると、2.26地球質量と推定される。太陽系からの距離は101光年で、恒星TOI-700から0.16天文単位、ちょうどKopparapu et al.2013の暴走温室限界のすぐ外側の軌道を37日で公転する。想像図では、潮汐ロックされており、片面が植物で覆われている姿を描いた。

TOI-700 dについての詳しいデータは以下のページ

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/TOI-700_d.html

(文責 木村なみ、山敷庸亮)

K2-18b

(Image credit: ESA/Hubble, M. Kornmesser)

K2-18 b was discovered in 2015 orbiting around its host star K2-18. The star is an M-type dwarf and it is located about 110 light years from Earth. 

The exoplanet K2-18 b, located in the habitable zone, has a mass about 9 times that of Earth, which means it’s either an icy giant like Neptune or a rocky world with a thick, hydrogen-rich atmosphere. It is also very close to its host star, so it orbits at around 0.1429 AU and it takes 32.9 days to complete one orbit. 

Although it orbits close to the star, the exoplanet is still in the habitable zone, which means it can support liquid water on its surface. In fact, in September of 2019, researchers published two independent studies showing that there is a possibility of water vapor on K2-18 b. This was discovered by observations made with the Hubble Space Telescope. Some early models predict that K2-18b’s effective temperature falls somewhere between -100 and 116 degrees Fahrenheit, and if it is about as reflective as Earth, its equilibrium temperature would be roughly the same as our home planet.

“This is the only planet right now that we know outside the solar system that has the correct temperature to support water, it has an atmosphere, and it has water in it—making this planet the best candidate for habitability that we know right now,” University College London astronomer Angelos Tsiaras, a coauthor of one of the two studies, said during a press conference.

 Image via Alex Boersma/iREx.

This is the first time that water vapor has been identified in the atmosphere of a non-gas-giant exoplanet in the habitable zone of its star, but soon after the announcement, many planetary scientists critiqued how the discovery was covered in the media.

In fact, just a few days later, Scientific American posted a harsh critique of the media coverage, claiming that K2-18 b is not at all habitable:

“The crux of the issue is the size of the planet. K2-18b is about 2.7 times the size of Earth—so large that the planet must have a massive, extended atmosphere, with a significant fraction of light hydrogen gas. An atmosphere like this makes K2-18b much more akin to Neptune than it is to Earth.

In a hydrogen-rich atmosphere, the temperature and pressure increase the deeper you go. By the time the rocky core is reached, the pressure is expected to be thousands of times higher than the surface of Earth, and the temperature can approach 5,000 degrees Fahrenheit.

These conditions are bad news for the formation of complex molecules, such as DNA, which aren’t stable at high temperatures and pressures. Even if we’re very open-minded about the conditions required for life to evolve, there’s broad consensus that complex molecules of some kind are necessary, to ensure that enough information is provided for replication to occur. Complex molecules cannot form on the deep surface of K2-18b.”

Although the planet may not habitable, it is still a huge discovery with great implications of finding more exoplanets that can hold water. The search for another habitable world outside of our solar system, or life on another planet goes on. 

https://www.nationalgeographic.com/science/2019/09/first-water-found-in-habitable-exoplanets-atmosphere-hubble-kepler-k2-18b/
https://blogs.scientificamerican.com/observations/no-the-exoplanet-k2-18b-is-not-habitable/
https://www.space.com/alien-planet-k2-18b-water-vapor-not-earth-twin.html
https://exoplanets.nasa.gov/exoplanet-catalog/4847/k2-18-b/