月: 2024年4月

Kepler-1625 b/ Exomoon Kepler-1625 b I

Imaginary picture of Kepler-1625 and its exoplanet (Yui Nagato)

Imaginary picture of Kepler-1625 b

Kepler-1625 b は、太陽系から 7587.4 光年( パーセク)離れた恒星Kepler-1625 を周回する系外惑星で 2016 年に公開されました。恒星 Kepler-1625 は視等級 14.4, 絶対等級 2.5 です。この恒星は太陽の 1.0 倍の質量で、 半径は太陽の1.8 倍であり 表面温度は 5586 で、スペクトル型は G5です。この恒星の惑星系で Kepler-1625 b は、恒星 Kepler-1625 のまわりを 公転周期287.4 日で、 軌道長半径 0.84 天文単位 ( 125774415.6 km)で公転しています。

Kepler-1625 bはNASAのKepler宇宙望遠鏡が発見した2,662個の太陽系外惑星の内の1つで、地球から8000光年離れたKepler-1625を周回する木星サイズの巨大ガス惑星です。ガス惑星であることからこの惑星はハビタブルな惑星ではありませんが、ハビタブルゾーン周辺に位置しています。

Credits: ExoKyoto(http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Kepler-1625_bJP.html)

Kepler宇宙望遠鏡のトランジットのデータが詳細に解析されたところ、2018年にKepler-1625 bが通過した直後に別の微弱なトランジットのシグナルが見つかり、Hubble宇宙望遠鏡でも追跡研究が行われ、このシグナルはKepler-1625 bを周回する月である可能性が示され、太陽系外惑星の月(Exomoon)候補として、Kepler-1625 b Iと名付けられています。ただ、Kepler-1625 b Iのトランジットのシグナルは微弱であるため、追跡研究において実験上のノイズの可能性も指摘されており、確定はされていません。今後、James Webb宇宙望遠鏡による詳細な観察により、初の太陽系外衛星の確定が期待されています。

Kepler-1625 b Iが存在する場合は、海王星サイズのガス衛星だと考えられています。ガス衛星ですので、この衛星もハビタブルな環境は期待できませんが、シミュレーションを用いたKepler-1625 b やKepler-1625 b Iに関する研究も進められており、月であるKepler-1625 b Iにさらに、地球サイズの月が存在する可能性も示されています。その月は岩石衛星であり、ハビタブルゾーン付近に存在するハビタブルな月である可能性があり、地球外生命体の存在も期待されます。

Credits: NASA
(https://exoplanets.nasa.gov/news/1525/new-moon-astronomers-find-first-evidence-of-a-possible-moon-outside-our-solar-system/)

Exomoon候補であるKepler-1625 b Iについてはまだ未確定で、その月となるとさらにシミュレーションの域を超えませんが、私たちが住む太陽系を考えてみると、水星と金星以外は月を有しているので、惑星にとって月はありふれた存在だと言えると思います。James Webb宇宙望遠鏡による更なる観察によって、初の太陽系外衛星が確定されることを期待しています。

Kepler-1625とその惑星、衛星、衛星の周りを公転する星の想像図(Yui Nagato)

Kepler-1625 bの衛星の周りを公転する星の地上から見た想像図(Yui Nagato)

(文責:小塚)

<参考>

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Kepler-1625_bJP.html

https://exoplanets.nasa.gov/news/1525/new-moon-astronomers-find-first-evidence-of-a-possible-moon-outside-our-solar-system/

https://academic.oup.com/mnras/article-abstract/510/2/2583/6498286?redirectedFrom=fulltext

https://arxiv.org/pdf/1810.02712.pdf

Kepler-1625 bの詳細な情報はこちら

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Kepler-1625_bJP.html

HD 110067系

Imaginary Picture of Exoplanets of HD 110067 (Yuna Watanabe)

Imaginary Picture of HD 110067

この星は HD 110067 です。 恒星 HD 110067 は太陽系から 105.1 光年 (32.2 パーセク) 離れています。恒星 HD 110067 は視等級 8.4, 絶対等級 5.9 です。また太陽の 0.8 倍の質量と、 0.8 倍の半径です。 表面温度は 5266ケルビンで、スペクトル型はK0V です。

HD110067は、太陽の8割弱の質量と半径を持つ恒星で、地球からかみのけ座の方向に約100光年離れた位置にある8等級のK型主系列星である。K型主系列星とは、恒星の分類法の一つであるスペクトル型がK、光度階級がVの、核で水素の核融合反応を起こしている主系列星であり、橙色惑星とも呼ばれている。

Wikipediaより引用

2023年に、周囲を6個の太陽系外惑星が公転していることがトランジット法による観測から確認された。トランジット法とは、周囲を公転する惑星が周期的に主星の手前を通過することにより生じる、主星の明るさの周期的な光度変化から惑星を発見する観測方法である。HD11067は、トランジットを起こす惑星を4個以上持つことが知られている恒星としては最も明るい。また、定かではないが、形成から約81億年が経過しているとされ、金属量は太陽の63%となっている。さらに、HD 110067 はヘンリー・ドレイパーカタログにおける名称であるが、この恒星は太陽系外惑星探索衛星であるTESSの観測により、周囲を公転する惑星候補が検出されていたため、TESS object of interest (TOI) におけるカタログ番号として TOI-1835 という名称も付与されている。

宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による世界的な連携観測によって、太陽系から約100光年離れた恒星HD 110067の周りで6つのトランジット惑星を発見した。またこの6つの惑星は、全ての隣り合う惑星同士の公転周期が簡単な整数比で表される尽数関係にある。

HD110067の内側を公転する惑星は、TOI-1835.03(のちにHD110067b)、TOI-1835.04(のちにHD110067c)と呼ばれている。また、ESAによって約20.52日の周期で公転するHD110067dが発見され、その後、HD 110067 d の公転周期と2:3の尽数関係にある公転周期が約30.79日の HD 110067 e が存在していることが見出された。その後、公転周期が約41.06日の HD 110067 f、約54.77日の HD 110067 g の存在が確かめられた。HD 110067 e と HD 110067 f、そして HD 110067 f と HD 110067 g はいずれも公転周期の比が3:4の尽数関係にあり、6個の惑星全体の公転周期の比を見ると、9:12:16:24:36:54の尽数関係にあるということになる。

この惑星系は、惑星がどのように形成したかを考える上で貴重な惑星系となるほか、それぞれの惑星大気の観測が行われれば、惑星の大気獲得過程や恒星からの光が惑星大気の散逸や化学進化に与える影響の理解につながると期待される。

発見された6つの惑星の位置を一定の時間間隔で繋いだ線が作る幾何学模様
クレジット:Thibaut Roger/NCCR PlanetS、CC BY-NC-SA 4.0

HD110067系の想像図の全貌(Yuna Watanabe)

【参考文献】

東京大学、「共鳴し合う6つ子の惑星を発見――全ての隣り合う惑星の公転周期が尽数関係を持つ惑星系HD 110067―」:
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/z0109_00101.html

Wikipedia「HD 110067」:https://ja.wikipedia.org/wiki/HD_110067

Sorae, 「「HD 110067」に共鳴し合う6つの惑星を発見 惑星科学における重要な “化石”」:
https://sorae.info/astronomy/20231210-hd110067.html

Yahoo News, 「6つの惑星が「軌道共鳴」状態にある恒星系、100光年先で新たに発見」:https://news.yahoo.co.jp/articles/60006f29da1de5f15dac66c2d4cf5956624aebf9

(文責:新原)

HD 110067系の詳細な情報はこちら

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/HD_110067JP.html