月: 2022年8月

AB Aurigae b

AB Aur b は、太陽系から 469.7 光年( パーセク)離れた恒星AB Aur を周回する系外惑星で 2008 年に公開されました.
恒星 AB Aur は視等級 7.1, 絶対等級 1.3 です.
この恒星は太陽の 2.4 倍の質量で、 半径は太陽の1.7 倍であり 表面温度は 9600 で、スペクトル型は A0Vです。

 

史上初:惑星の赤ちゃんを直接撮像。現在も成長し続ける原始惑星。

日本語表記は「ぎょしゃ座AB星b」。誕生から200万年程度しか経っていないとされる若い星(Ae/Be型星)であるぎょしゃ座AB星のガス円盤内に存在する原始惑星。地球から約508光年離れており、恒星(ぎょしゃ座AB星)から約93天文単位も離れた位置を公転している。質量は木星の9~12倍、半径のは木星の約2.75倍と予測されている。

2022年、国立天文台ハワイ観測所のThayne Currie氏を筆頭とする研究グループは、すばる望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡を使って今まさに成長しつつある原始惑星の直接撮像の成功を発表した。未だ惑星が形成される材料となるガスと塵の中に存在している原始惑星が撮像によって発見されたのは史上初とされている。
また、一般的な原始惑星系円盤の中で塵が少しずつ集まって惑星に成長していく「コア集積モデル」に対して、恒星から50天文単位を超える距離において原始惑星系円盤の一部が自身の重力で分裂・収縮して比較的速やかに惑星が形成されるという「円盤自己重力不安定モデル」と呼ばれる別のプロセスが提唱され、惑星形成に関する理論に重要な知見をもたらした。
すばる望遠鏡の SCExAO (スケックスエーオー) と CHARIS (カリス) は系外惑星や恒星まわりの円盤を観測するための最新鋭装置で、両者を組み合わせることで高いコントラストで天体を撮像し、同時にそのスペクトルを観測することが可能である。SCExAOはシャープな星像を作る極限的な補償光学系、CHARIS は天空の微小な面の各点のスペクトルを一度に取得できる面分光の機能を持つ。
この惑星は2016年に最初に検出されたが、新しく形成された惑星ではなく「ぎょしゃ座AB星」の原始惑星系円盤の一部を識別したとされていた。しかし、その後のすばる望遠鏡で得られたSCExAO/CHARISデータは、ぎょしゃ座AB星bのスペクトルが原始惑星系円盤のスペクトルとは異なり、温度が新しく生まれた惑星の予測値と類似していることを示したため、ぎょしゃ座AB星bがぎょしゃ座AB星の周囲を公転しており、背景にある恒星などではないという証拠が確認された。

Currie, T., Lawson, K., Schneider, G. et al. Images of embedded Jovian planet formation at a wide separation around AB Aurigae. Nat Astron 6, 751–759 (2022). https://doi.org/10.1038/s41550-022-01634-x
天文学:木星型の太陽系外惑星の形成過程が観測された | Nature Astronomy | Nature Portfolio (natureasia.com)
Hurley, Timothy (April 9, 2022). “Mauna Kea scientists discover emerging planet”. Honolulu Star-Advertiser.

(文責:小川)

Imaginary picture of AB Aurigae b (illastrated by Yui Nagato)

Imaginary picture of AB Aurigae b (Illustrated by Yui Nagato)
Imaginary Picture of AB Aurigae b

WASP-121 b

WASP-121 b は、太陽系から 853.8 光年( パーセク)離れた恒星WASP-121 を周回する系外惑星で 2015 年に公開されました.
恒星 WASP-121 は視等級 10.4, 絶対等級 3.3 です.
この恒星は太陽の 1.4 倍の質量で、 半径は太陽の1.5 倍であり 表面温度は 6460 で、スペクトル型は F6Vです。
この恒星の惑星系で WASP-121 b は、恒星 WASP-121 のまわりを 公転周期1.3 日で、 軌道長半径 0.03 天文単位 ( 3805769.8 km)で公転しています。

 

公転と自転周期がほぼ同時のホット・ジュピター。昼半球と夜半球の気温差によりルビーやサファイアの雨?

2015年に太陽系外惑星探査プロジェクトスーパーWASPによる観測で発見された。
地球から「とも座」の方向におよそ880光年離れた位置にある灼熱巨大ガス惑星で、F型主系列星WASP-121の周囲を公転している。質量は木星の約1.2倍、半径は木星の約1.8倍で、恒星(WASP-121)から380万kmとかなり近い距離を1日余り(約30時間)で公転する。表面温度は約2000 K、上層大気は約2500Kにもなる「ホット・ジュピター」の一つ。
自転周期が公転周期とほぼ同じで、半面は常に恒星を向く昼半球(もう半面は常に外を向く夜半球)となるのが特徴的。
夜半球ですら気温が1500℃を超えるので、地球の様な水の雲ではなく、鉄やマグネシウム、クロム、バナジウムといった金属で構成される雲が存在している。
2017年、ハッブル宇宙望遠鏡による観測でWASP-121 bの大気組成が水蒸気、酸化バナジウム(II)、酸化チタン(II)が含まれている事が明らかになり、成層圏が存在することはほぼ間違いないとされる。

2019年、恒星に近いことから潮汐力によってWASP-121 bは引き裂かれる寸前といえる状態で、フットボールのような形状になっていると考えられる。David Sing氏らはハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている「宇宙望遠鏡撮像分光器(STIS)」の観測データを使い、雲のなかに凝縮している鉄やマグネシウムといった金属までもが、軽い元素(水素やヘリウム)とともに惑星から離れた宇宙空間へ流出していることを確認した。

2022年、ハッブル宇宙望遠鏡でWASP-121 bの昼半球と夜半球の両方のスペクトル解析により、地球とは異なる水循環が確認された。常に恒星を向く昼半球では上層大気の温度が最大で3000℃を超え、水は蒸発してさらに水素と酸素に分解される。一方、夜半球の上層気温は1500℃にまで下がるため、昼半球と夜半球で1500℃も気温差が生まれることで強風が吹き抜け、水素と酸素を夜半球まで運び、夜半球側で水素と酸素が再結合して水蒸気となり、そのまま再び昼半球に吹き込むという循環をもつ。天文物理学者のTansu Daylan氏によると、この強風は20時間程度で惑星全体の雲を移動させることができるとされる。
WASP-121 bにて様々な金属元素(バナジウム、鉄、クロム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、ニッケルなど)は確認されたが、アルミニウムやチタンが検出されなかった。研究チームはアルミニウムやチタンが凝縮し地表に降り注いでしまったためだと推測し、アルミニウムは大気中の酸素と凝結すると「コランダム」という鉱物になり、コランダムにクロムや鉄、チタン、バナジウムなどの不純物が含まれるとルビーやサファイアになるため、WASP-121 bの夜半球に液体のルビーやサファイアが雨となって降り注いでいる可能性があると推測した。

Delrez, L. et al. (2016). “WASP-121 b: a hot Jupiter close to tidal disruption transiting an active F star”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 458 (4): 4025-4043. arXiv:1506.02471. Bibcode: 2016MNRAS.458.4025D. doi:10.1093/mnras/stw522. ISSN 0035-8711.
Evans, Thomas M. et al. (2017). “An ultrahot gas-giant exoplanet with a stratosphere”. Nature 548 (7665): 58-61. arXiv:1708.01076v1. Bibcode: 2017Natur.548…58E. doi:10.1038/nature23266. ISSN 0028-0836.
David K. Sing. et al. (2019). “The Hubble Space Telescope PanCET Program: Exospheric Mg ii and Fe ii in the Near-ultraviolet Transmission Spectrum of WASP-121b Using Jitter Decorrelation”.The Astronomical JournalVolume 158Number 2https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-3881/ab2986/pdf
Mikal-Evans, T., Sing, D.K., Barstow, J.K. et al. Diurnal variations in the stratosphere of the ultrahot giant exoplanet WASP-121b. Nat Astron 6, 471–479 (2022).https://doi.org/10.1038/s41550-021-01592-w An exotic water cycle and metal clouds on the hot Jupiter WASP-121 b | Max Planck Institute for Astronomy (mpia.de)

(文責:小川)

TOI-2109 b

TOI-2109 b は、太陽系から 861.1 光年( パーセク)離れた恒星TOI-2109 を周回する系外惑星で 2021 年に公開されました.
恒星 TOI-2109 は視等級 10.0, 絶対等級 2.9 です.
この恒星は太陽の 1.4 倍の質量で、 半径は太陽の1.7 倍であり 表面温度は 6500 で、スペクトル型は F0です。
この恒星の惑星系で TOI-2109 b は、恒星 TOI-2109 のまわりを 公転周期0.7 日で、 軌道長半径 0.02 天文単位 ( 2541783.2 km)で公転しています

 

公転周期がわずか16時間。いつか消滅する?観測史上2番目に熱いホット・ジュピター(2022年現在)。

2021年にIan Wongを筆頭とする研究グループにより発見が公表された。
ヘルクレス座の方向におよそ855光年先に存在する木星より一回り大きい巨大ガス惑星であり、F型恒星TOI-2109の周囲を公転している。質量は木星の5.02倍、半径は木星の1.35倍で、恒星との距離が近くて表面温度が高温である「ホット・ジュピター」に分類される。
恒星であるTOI-2109からの距離が約240万km(太陽と地球の距離はおよそ1億5000万km)と極めて近くて、公転周期(地球における1年)がわずか約16時間しかないことが特徴的。

恒星のTOI-2109は太陽よりも一回り大きい表面温度の高いF型星であることから、距離の近いTOI-2109 bの昼側の表面温度は摂氏およそ3330度と推定され、同じくホット・ジュピターであるKELT-9 b(摂氏約4300度)に次いで系外惑星の観測史上2番目に高いとされている。
TOI-2109 bの軌道はいずれ主星TOI-2109への落下が予想され、1000万年後にこの惑星は存在しないかもしれないと語られている。

※恒星の名前にあるTOIとはTess Objects of Interest の頭文字で、太陽系外惑星探索衛星TESSの観測により惑星が存在する可能性が示された天体のカタログを意味している。TOIカタログにリストアップされた天体は、ドップラー分光法や直接撮像法などの、トランジット法以外の観測方法によって追加観測が実施される。

TOI-2109: An Ultrahot Gas Giant on a 16 hr OrbitIan Wong et al 2021 AJ 162 256

TOI-2109: An Ultrahot Gas Giant on a 16 hr Orbit (iop.org)

Ultrahot Gas Giant Found Circling TOI-2109 | Sci-News.com

(文責:小川)

HD 260655 b

Imaginary Picture of HD 260655 b

HD 260655 b は、太陽系から 32.6 光年( パーセク)離れた恒星HD 260655 を周回する系外惑星で 2022 年に公開されました.
恒星 HD 260655 は視等級 9.8, 絶対等級 9.8 です.
この恒星は太陽の 0.4 倍の質量で、 半径は太陽の0.4 倍であり 表面温度は 3803 で、スペクトル型は MOVです。
この恒星の惑星系で HD 260655 b は、恒星 HD 260655 のまわりを 公転周期2.8 日で、 軌道長半径 0.03 天文単位 ( 4387705.5 km)で公転しています。

HD 260655 bは、質量が地球の約2.14倍、半径が地球の約1.24倍のスーパーアースです。主星HD 260655(M型星、赤色矮星)から約0.03AUのところを約2.77日かけて公転します。HD 260655 bの黒体温度は推定約649Kで、熱すぎるため生命が存在する可能性は低いと考えられています。

主星HD 260655(M型星)の周りにはもう一つHD 260655 cという岩石惑星が公転していますが、2つともTESS missionの中でトランジット法により発見されました。また、HIRESとCARMENESによる観測も行われ、そのときは視線速度法によって分析されました。

HD 260655は太陽系からの距離が約10 pc(約32.6光年)と比較的近いところにあり、複数惑星を持つと知られている赤色矮星の中で、HD 219134(約21.3光年)、LTT 1445 A(約22.5光年)、AU Mic(約31.9光年)に続き4番目に近いものになっています。しかも赤色矮星の中でも、AU Mic(J = 5.436mag)に続き2番目に明るい (J = 6.7 mag)星です。主星が近くてかつ明るいため、HD 260655 b、HD 260655 cは大気の観測に最適だと考えられています。最近運用され始めたジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測結果には、岩石惑星の大気についてより多くの知見が得られるのではないか、と期待が寄せられています。
(文責:白樫 聖夢)

HD 260655 bについてもっと知りたい方は、以下のデータベースページをご覧ください。

参考文献
[1] HD 260655 b, ExoKyoto,
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/HD_260655_bJP.html, (閲覧日:2022/07/20)

[2] R. Luque et al., “The HD 260655 system: Two rocky worlds transiting a bright M dwarf at 10 pc”, A&A, 2022/04/22, https://arxiv.org/abs/2204.10261, (閲覧日:2022/07/19)

[3] AU Mic, simbad,
http://simbad.u-strasbg.fr/simbad/simbasic?Ident=AU+MIC&submit=SIMBAD+search,(閲覧日:2022/07/20)