カテゴリー: 系外惑星の紹介

GJ 682 b

GJ 682 b は、恒星GJ 682 を周回する系外惑星で 2014 年に公開された. 恒星 GJ 682 は視等級 22.0, 絶対等級 25.0 である. この恒星は太陽の 0.3 倍の質量で、 半径は太陽の0.3 倍であり 表面温度は 3028 ケルビンで、スペクトル型は M3.5Vである。この恒星の惑星系で GJ 682 b は、恒星 GJ 682 のまわりを 公転周期17.5 日で、 軌道長半径 0.08 天文単位 ( 11,967,829.7 km)で公転している。

GJ 682 bは、恒星GJ 682の周りで発見された2つのスーパーアースのうち内側の軌道を周回する系外惑星で、2014年に視線速度法により発見された。中心星のGJ 682は太陽系からさそり座の方向に約16光年離れた所に位置するM型の赤色矮星である。この赤色矮星は半径と質量が太陽の約0.3倍で、表面温度は3028Kである。またスペクトル型はM3.5Vであり、視等級は10.95で地球からは非常に暗く小さいため目視することはできない。
GJ 682 bは中心星のGJ 682から0.08 AUの軌道を約17.5日の公転周期で周回しており、その軌道は中心星のハビタブルゾーン内にある。GJ 682 bの質量は地球の4.4倍でスーパーアースに分類されているが、サブネプチューンのような組成の可能性もある。さらに潮汐ロックされていると考えられている。


またこのGJ 682 bと恒星GJ 682の周りで発見されたもう一つの系外惑星GJ 682 cについては、その存在が確かではない。2014年にこの系外惑星の発見を報告した論文では、GJ 682は彩層活動が活発でないと見られていることなどから、観測された信号が2つの惑星によるドップラー効果である可能性が高いとしている。その一方で、いくつかのM型星の観測データを再分析した2020年の論文では、周期17.48日の信号(GJ 682 b と考えられている信号)はおそらく恒星の活動によるものだという報告がされている。しかしいずれにせよ現時点では、これら2つの系外惑星が存在しないとも言い切れないようである。これら2つの系外惑星の存在については、今後の報告に期待したい。

参考文献:
1. “CD-44 11909 / Gl 682 – SolStation.com”, http://www.solstation.com/stars/gl682.html (2022年2月26日参照)

2. “GJ 682 Overview – NASA Exoplanet Archive”,
https://exoplanetarchive.ipac.caltech.edu/overview/GJ%20682%20b#planet_GJ-682-b_collapsible (2022年2月26日参照)

3. “Bayesian search for low-mass planets around nearby M dwarfs – estimates for occurrence rate based on global detectability statistics”,
https://academic.oup.com/mnras/article-pdf/441/2/1545/3626324/stu358.pdf (2022年2月26日参照)

4. “Search for Nearby Earth Analogs. II. Detection of Five New Planets, Eight Planet Candidates, and Confirmation of Three Planets around Nine Nearby M Dwarfs”,
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4365/ab5e7c/pdf (2022年2月26日参照)

GJ 682 b について詳しく知りたい方は以下のExokyotoのデータベースページをご覧ください。

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/GJ_682_bJP.html

TOI-1338b

TOI-1338bは、連星系TOI-1338を周回する周連星惑星である。NASAのインターン・プログラム中の高校生が発見したことで話題となった。

TOI-1338はがか座の方向1300光年先にある連星系で、質量は主星は太陽の1.1倍程度、伴星は太陽の1/3程度、約15日の周期で互いの周りを回っている。主星については、半径は太陽の3倍程度あるが表面温度は5723Kと太陽と同程度であり、スペクトル型はG4、見かけの等級は11.5、絶対等級は3.5である。名前のTOIというのはTESS Object of Interestの頭文字を取ったもので、系外惑星探査衛星TESSが探査した恒星や惑星を意味する。TOI-1338bの発見により、TOI-1338はTESSが発見した初の周連星惑星をもつ連星となった。

TOI-1338bはこの系唯一の惑星で、質量は地球の7倍程度、トランジット法で発見され2020年に公開された。その恒星が連星であることが影響し、トランジットの周期は93-95日で不規則。軌道面が連星の軌道面とほぼ一致しているため、常に恒星食の状態にある。ExoKyotoのスペクトルモジュールによれば、受ける光は可視光44.51%、赤外線47.80%、紫外線7.66%である。

(文責 清水里香)

(Imaginary Picture of TOI-1338 b, credit, Fuka Takagi & Yosuke Yamashiki, created using Planet Generator and OpenGL)
(Image Credit: Miu Shimizu, Kyoto Prefectural University )

TOI-1338 についてもっと知りたい方は、以下のデータベースページをご覧ください。

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/TOI-1338JP.html

GJ 3323 b

GJ 3323 b は、恒星GJ 3323 を周回する系外惑星で 2017 年に公開された. 恒星 GJ 3323 は視等級 12.2, 絶対等級 25.0 である. この恒星は太陽の 0.2 倍の質量で、半径は太陽の0.1 倍であり 表面温度は 3159 ケルビンで、スペクトル型は M4である。 この恒星の惑星系で GJ 3323 b は、恒星 GJ 3323 のまわりを 公転周期5.4 日で、 軌道長半径 0.03 天文単位 ( 4,909,802.1 km)で公転している。

GJ 3323 b について詳しく知りたい方は以下のExokyotoのデータベースページをご覧ください。

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/GJ_3323_bJP.html

Imaginary picture of GJ 3323 b

GJ 3323 bの想像図 
(Image Credit: Megumi Yokoyama, Habitable Research Group Moriyama Junior High School )

Proxima Centauri c

Proxima Centauri cは、2019年に視線速度法によって発見された、スーパーアースサイズの系外惑星です。推定半径は木星の0.16倍 (地球の1.8倍) 、推定質量は木星の0.03倍 (地球の9.54倍) です。中心星はProxima Centauri (太陽から約4.2光年、M型星) で、Proxima Centauri cは中心星から約1.5AUのところを一周約5.3年かけて回っています。また、その軌道は、居住可能性がありかつ地球からもっとも近い惑星として知られる、Proxima Centauri bの一つ外側にあります。Proxima Centauri c自体は、中心星のハビタブルゾーンから大きく離れていて、推定黒体温度が-231℃と低く、居住不可能と考えられています。

(※中心星Proxima Centauriについては、Proxima Centauri bの記事をぜひご覧ください!)

スーパーアースサイズの惑星は、通常、中心星のスノーライン付近で形成される、と考えられています。しかし、Proxima Centauri cの場合、Proxima Centauriのスノーラインは0.088AU付近にあり、Proxima Centauri cは中心星から約1.5AUにあるため、この考えを覆す惑星である、と言えます。一方で、この惑星は本当は存在しないのかもしれません。現在、ESAが打ち上げたガイアなどの宇宙望遠鏡が、Proxima Centauri cの存在を確認しようとしています。

(文責:白樫)

参考
1) Proxima Centauri c, ExoKyoto, http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Proxima_Centauri_cJP.html
2) “A second planet might orbit the closest star to the sun, and astronomers think it’s a super-Earth”, INSIDER,
https://www.businessinsider.com/super-earth-orbits-proxima-centauri-closest-star-to-sun-2020-1

 

Proxima centauri cの想像図(岩石惑星の場合その1)
(Image Credit: Yuna Watanabe, Habitable Research Group Moriyama Junior High School )

Proxima centauri cの想像図(岩石惑星の場合その2)
(Image Credit: Yuna Watanabe, Habitable Research Group Moriyama Junior High School )

Proxima centauri cの想像図(ガス惑星の場合)
(Image Credit: Yuna Watanabe, Habitable Research Group Moriyama Junior High School )

GJ 9827 c

(Imaginary Picture of GJ9827 c: 滋賀県立守山中学高等学校 ハビタブル研究会 渡邉由渚)

GJ9827(別名K2-135)は地球から約100光年離れたK6型星(表面温度4255K, 質量・半径共に太陽の約0.7倍程度)で、K2ミッション(ケプラー宇宙望遠鏡の第二期ミッション)によるトランジット法惑星探査が実施されました。その結果、この恒星の周りには3つのスーパーアース(地球の数倍程度の質量・半径の惑星)が周回していることが、2018年2月に出版のAstronomical Journal誌で報告されました。この3つのスーパーアース(中心星に近い方からGJ9827b, GJ9827c, GJ9827d)は、半径は地球の1.62倍, 1.27倍, 2.07倍で、中心星の周りを周回する軌道周期は1.2日, 3.6 日, 6.2日という値です。

この惑星系は地球から約100光年という距離にあり、現在(論文出版時の2018年2月)までにK2ミッションで発見されたスーパーアースの中では最も近い惑星となっています。そのこと、数年後に打ち上げ予定のJames Web Space Telescope (JWST)でのより詳細な惑星大気の観測に適していると強く期待されています。このような スーパーアースの惑星大気観測は、地球型惑星(岩石惑星)と木星製のようなガス惑星の境界に位置するスーパーアースがどのような大気構造及び内部構造を持っているかに迫る鍵とも言え、その意味でこのGJ9827惑星系は非常に有望な惑星系ということが言えます。

(Yuta Notsu)

GJ 9827 cについてもっと知りたい方は、以下のデータベースページをご覧ください。

GJ 9827 c (exoplanetkyoto.org)

(Imaginary Picture of GJ9827 c: Ryusuke Kuroki, Fuka Takagi & Yosuke A. Yamashiki)

ジャーナル記事

1.) A System of Three Super Earths Transiting the Late K-Dwarf GJ 9827 at 30 pc

2.) Mass determination of the 1:3:5 near-resonant planets transiting GJ 9827 (K2-135)

3.) HD 106315 and GJ 9827: Understanding the Formation and Evolution of Small Planets

 

WEB記事

1.) Planet GJ 9827 c

2.) THREE POSSIBLE SUPER-EARTHS DISCOVERED AROUND NEARBY SUN-LIKE STAR

3.) Planetary System GJ 9827, Secrets Of Far-Away Super-Earth

Pi Mensae b,c

<Pi Mensae b>  楕円軌道を持つスーパージュピター
<pi Mensae bの想像図 滋賀県立守山中学高等学校ハビタブル研究会 横山 恵美>

太陽の2.1倍の半径をもつとされる主星Pi Mensae (HD 39091)星には、合計二つの太陽系外惑星が発見されており、最初に発見されたのは、2001年に発見されたPi Mensae b (HD39091b)です。この惑星は、質量が木星の10.02倍と考えられており、かつ楕円軌道で中心星から1-5天文単位という、ちょうど金星相当軌道の内側からハビタブルゾーンの外側を2093日かけて周回する惑星です。なお、Pi Mensa bの半径はまだ正確には観測されていません。

(文責:山敷庸亮)

Pi Mensae b について詳しく知りたい方は以下のExokyotoのデータベースページをご覧ください。

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/pi_Men_bJP.html

<pi Mensae b (HD 39091 b)の楕円軌道(紫色)と、Kopparapu et al. 2013によるハビタブルゾーン位置>

<pi Mensae bの想像図 exokyoto system automated selection, – © 2018 ExoplanetKyoto – Ryusuke Kuroki, Yosuke A. Yamashiki and Natsuki Hosono>

<pi Mensae cの想像図 exokyoto system automated selection,© 2018 ExoplanetKyoto- Ryusuke Kuroki, Yosuke A. Yamashiki and Natsuki Hosono>

Pi Mensae c (テーブルさん座π星c) は、太陽よりもやや大きくて明るい G 型星である Pi Mensae の周りを回る、地球の約2倍の半径を持つスーパーアースサイズの惑星です。この惑星の存在は2018年9月16日の arXiv で最初に報告されており、太陽系外惑星探索衛星 TESS によって発見された初めての系外惑星となりました。なお、Pi Mensae の周りには 2001 年にすでに木星の10倍の質量を持つ Pi Mensae b が発見されています。

<左から(1)太陽とpi Mensae (HD 39091) (2) 木星、(3) 海王星、(4) 地球とpi Mensae cとの比較>

Pi Mensae c は、サイズに対して質量が小さく、地球よりも低密度な惑星だと推定されています。そのため、大量の水を持っている惑星、あるいは分厚い大気を持っている惑星であると考えられています。また中心星からの距離は、太陽から水星までの距離の 1/50 程度しかないため、表面は高温で水が蒸発し続ける環境になっていることが推測されます。

<pi Mensae c (HD 39091 c)の軌道と、暴走温室限界線(緑)>

ちなみに Pi Mensae c は地球から 60 光年ほどの距離にあり、視等級は 5.67 等級であるため、非常に暗い環境下であれば地上から肉眼でも見ることのできる恒星です。もし南半球を旅されてこの星を実際に見ることができた際には、ぜひ「あの星の周りにはスーパーアースが回っているんだよ!」と周りの人に教えてあげましょう。

(文責:佐々木貴教)

Pi Mensae cについて詳しく知りたい方は以下のExokyotoのデータベースページをご覧ください。

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/pi_Men_cJP.html

ちなみに、Mensaというのは日本語で「テーブルさん座」と定義されていますが、そもそもテーブルさんって何か知っていますか?テーブルさんとはテーブル山、すなわち、Table Mountain (ラテン語ではMons Mensae ), 南アフリカケープタウンにある、街を見下ろす素晴らしい台地状の山で、喜望峰周辺部の特徴的な地形です。フランスの天文学者ニコラ=ルイ・ド・ラカーユ(Abbé Nicolas-Louis de Lacaille)が設定した南天の14(12)の星座の一つです。

テーブルさん(Table Mountain) の写真を参考までに掲載します。

<Mons Mensae – Table Mountain, photo taken by Yosuke A. Yamashiki in 2000, © 2018 ExoplanetKyoto>>