51 Pegasi b

1995 年に人類史上初めて、スイスのミシェル・マイヨール(Michel Mayor)らにより発見された最初の太陽系外惑星です。マイヨールとディディエル・クゥエロツらは当時最新鋭の高分散分光器ELODIEを備えたフランスのオート・プロヴァンス天文台(Observatoire de Haute-Provence: OHP)にて、視線速度法によりペガスス座51番星を観測し、木星質量の惑星が太陽系の水星軌道の内側を自転周期 4.2 日で公転していることを Nature 誌に発表しました (i)。この功績により、両氏は2019年ノーベル物理学賞を受賞しました。

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(Imaginary Picture of 51 Pegasi b as original “Hot Jupiter” Credit:Yosuke Yamashiki, Ryusuke Kuroki & Natsuki Hosono)

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(Hot Jupiter 51 Pegasi b orbiting around its host star 51 Pegasi, Credit:Yosuke Yamashiki, Ryusuke Kuroki & Natsuki Hosono)

ペガサスに騎乗したギリシャ神話の英雄ベレロポンにちなんでベレロフォン(Bellerophon)と呼ばれることもあるこの系外惑星(51 Pegasi b)は、その灼熱の推定環境にちなんでホットジュピター(灼熱の木星)と分類されました。その後、視線速度法により、数々のホットジュピターが発見されています。例えば同じペガサス座のオサイリス(Osiris: HD 209458 b)などは公転周期がわずか 3.5 日で主星のまわりを公転し、ハッブル望遠鏡により 2001 年に大気中に酸素と炭素が含まれていることが観測された初めての系外惑星です。

太陽系の形成過程の標準モデルでは、ガス惑星は中心星から遠くはなれた場所(~5AU)で形成されるとされていたため、このような中心星近傍(<0.05AU)に存在する巨大ガス惑星の形成過程は多くの議論を呼びました。その後、恒星から遠く離れて形成された巨大ガス惑星が軌道変遷により水星軌道の内側にまで移動してきた可能性が最も高いとされています。

なお、ミシェル・マイヨール氏は第 31 回京都賞を受賞され、同年にはノーベル物理学賞候補にもノミネートされました。そして、2019年には宇宙論のJames Peebles, そして共同発見者のディディエル・クゥエロツ(Didier Queloz)とともにノーベル物理学賞を受賞しました。

(i) Michel Mayor & Didier Queloz. 1995. A Jupiter-mass companion to a solar-type star. Nature 378(23): 355-359.

マイヨールとクゥエロツは、高分解能分光計(高分散分光器)ELODIEを備えたフランスのオート・プロヴァンス天文台にてペガスス座51番星(51 Pegasi)の視線速度を測定し、木星質量の惑星が太陽系の水星軌道の内側(0.05AU)を公転周期 4.2 日で公転していることを発見し、また系外惑星(51Pegasi b)が、小さな赤色矮星からガスが流れ出た残骸であるという可能性と同時に、元々恒星から遠く離れて(~5AU)形成された木星質量のガス惑星が内側に移動してきたと考えられる可能性を示しています。特に恒星 51 Pegasi の推定寿命が G 型星の寿命に近い 100 億年と推定されたこともあり、惑星軌道の変遷によりガス惑星が内側に移動した可能性があることが発表後議論されました。また、この視線速度の変化が大質量星のパルサーに由来するものではないことを明らかにし、系外惑星発見の揺るぎないデータと論述を示しました。またフィレンツェにおける研究発表を通じて、ハーバード・スミソニアン天体物理センターを含む他の天文グループにより視線速度変化の周期が 4.2 日であるという独立調査がなされ、その信頼性が確認されました。

(文責:山敷庸亮)

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(ExoKyoto Stellar Window を用いて表示した 51 Peg b の位置)

51 Pegasi b についての詳しい情報はこちら。
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/51_Peg_b.html