Imaginary Picture of AU Mic b (Fuka Takagi & Yosuke A. Yamashiki)
AU Mic b は、太陽系から 31.9 光年( パーセク)離れた恒星AU Mic を周回する系外惑星で 2020 年に公開されました。恒星 AU Mic は視等級 8.6, 絶対等級 8.6 です。この恒星は太陽の 0.5 倍の質量で、 半径は太陽の0.8 倍であり 表面温度は 3700 で、スペクトル型は M1Vです。この恒星の惑星系で AU Mic b は、恒星 AU Mic のまわりを 公転周期8.5 日で、 軌道長半径 0.08 天文単位 ( 12424103.2 km)で公転しています。
AU Microscopii (AU Mic)は、けんびきょう座の方向約32.3光年先にある恒星です。M1型に分類される赤色矮星で、見かけの等級は8.7、表面温度は3730 Kです。半径は太陽の約0.57倍で、年齢は太陽より約150倍若く2000万年から3000万年と推測されています。この星は非常に若く、自身の重力で内側に引かれ圧縮される際に発生する熱によって光を放出しています。太陽のような水素の核融合によるエネルギーは、10%未満しかありません。
興味深いのは、この星の周りを回る塵円盤です。この円盤は、マウナケア山頂にあるハワイ大学2.2m望遠鏡によって2003年に発見されました。円盤はAU Micから約35 AUから210 AUのところで検出されていて、塵の年齢は現在の星の年齢を超えているといわれています。また、円盤を構成している塵の総量は少なくとも月の6倍の質量に相当すると考えられています。
円盤の中を移動する塵の塊が追跡されてきましたが、TESSとスピッツァー宇宙望遠鏡によってこの塵円盤の中から惑星が発見されたと2020年6月に発表されました。それがAU Mic bです。AU Mic b は主星から約0.07 AUの軌道を約8.46日で公転しています。半径は木星の約0.4倍で、質量は木星の約0.18倍です。
AU Micのような星の惑星の検出は特に難しいとされています。というのは、このような星は強い磁場をもち、太陽黒点のような冷たく暗く磁気の強い領域である恒星黒点に覆われていることがあり、この恒星黒点は頻繁に強力なフレアを発生します。実際、TESSがAU Micを観測していた2018年7月から8月にも多数のフレアが発生し、その中にはこれまでに太陽で観測された最も強いフレアよりも強力なものもありました。研究チームは、これらの影響をデータから取り除く詳細な分析を行い、AU Mic bの発見に至りました。
この塵円盤の中に存在する惑星の研究により、惑星の形成や進化の解明に近づくことが期待されています。
(文責 清水里香)
AU Mic bについてもっと知りたい方は、以下のデータベースページをご覧ください。
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/AU_Mic_bJP.html
(参考)
NASA “NASA’s TESS, Spitzer Missions Discover a World Orbiting a Unique Young Star” <https://www.nasa.gov/feature/goddard/2020/nasa-s-tess-spitzer-missions-discover-a-world-orbiting-a-unique-young-star> (2020/6/29 参照)